シンガポール国際写真祭にてSpecial Mention!!

2024年10月18日からシンガポールで開催されている第9回シンガポール国際写真祭(Singapore International Photography Festival, SIPF)ダミーブックアワードにおいて、「A Flower on the Rock」がスペシャルメンションに選出されました。


この作品は、すでに中国を中心に何度か写真祭に出品しているものですが、内容としては、力士だった父が病気が原因で引退したという事実を前提にしつつ、その挫折とその後の生き方=過去の挫折があってもなお青年期に取り組んだ相撲を愛し続けた姿に焦点を当てるものでした。ビジュアル的には相撲が中心となっていますが、その背景としての人間の葛藤や挫折、受容といった過去との対峙について捉えたものです。

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そもそもシンガポール写真祭は、シンガポールで開催されるアジアを代表する国際的な写真祭です。2008年に開始されて以降、2年ごとに開催されており、例えば、展示やポートフォリオレビュー、その他の教育イベント、それに今回私が出品したダミーブックアワードなど、多様な取り組みを行っています。

そして、特にアジアを中心に、作家のほか、出版社やギャラリスト、キュレーターなど多数の専門家も来訪し、その場自体が写真関係者の交流の場にもなっています。

私が出品したダミーブックアワードは、未出版の写真集に新たな光を当て、写真家がその作品を本という形で発表する貴重な機会を与えてくれる場です。今回の写真祭では、61 か国から 220 冊の写真集の応募を受け、その中から48 冊の写真集がノミネートされたとのことです。この中からグランプリが1名のみ選ばれることになっていました。

熱帯に位置するシンガポールは非常に蒸し暑く、一気に寒くなり始めた北京から来た私にとって、海外まできたという感じを強く感じるものでした(そもそも北京自体、日本から見たら海外ですが)。

受賞については、当日まで全くわかりませんでした。写真祭開幕前にショートリストが発表され、リストに載った作家が本を郵送するという段取りなのですが、受賞者が誰になるかは、オープニングレセプションでの発表まで分からない形です。そして、私はスペシャルメンションという形で受賞しましたが、そもそもこのような特別賞があること自体、事前には分かりませんでした(ダミーブックアワードが1名、それに観客賞が1名と聞いていたので、このような賞の存在自体知らされていなかった)。

正直に言えば、グランプリ1名が選ばれるのみの写真祭ですので、特段期待もせずに写真祭の様子を見に渡航しました。なにぶん、こういう機会でもないとなかなか海外の写真祭を見に来るなんてことはないですから、受賞云々抜きにしてきちんと勉強する機会と捉えていました。

多くのレセプションがそうであるように、主催者の挨拶があり、そして受賞発表へと続きます。すでに夕方から夜になる時間でしたが、シンガポールはまだまだ汗の滲む暑さでした。そんなオープニングでのグランプリ発表後、突然審査員が2冊の本を抱えて演題に向かっているのを、先輩の千賀さんが見つけて教えてくださいました(千賀さんは、第8回シンガポール国際写真祭グランプリ受賞者。今回は作品の出版記念としていらしていました。)。

審査員が本を抱えて演台に立ち、声を発するまでの時間は、急に緊張が高まり、正直なところ冷静さを失うほどでした。本当に期待してきたわけではなかったので、だからこそ驚きで緊張が高まったのだと思います。他方、いつか海外で評価していただけたら嬉しいと考えていましたので、嬉しさも望外のものでした。その後、審査員の方から直接作品を紹介していただき、記念撮影。シンガポールという熱帯の半屋外で開催されたオープニングは、その暑さ、湿度と相まって、忘れ難い時間となりました。

※上記2枚については、シンガポール国際写真祭様より

作品の完成後、すぐに中国への赴任となったため、中国以外の写真祭への参加ができていなかったのですが、今回、思い切って中国国外の公募に応募してみて本当に良かったです。


今回の受賞について、まず、丁寧に作品を見て価値あるものとして評価してくださった審査員の方々に感謝したいと思います。そして、最後になりますが、多くの方が本作の制作にあたって支援してくださらなければ、今回の受賞はあり得ませんでした。あらためてお礼申し上げあます。

そして、こうした一つ一つの受賞や写真祭への参加を、次の制作、特に新しいテーマでの新作の制作へのモチベーションとして頑張っていきたいと思います。日本への本帰国後は、ヨーロッパへの出品や日本での展示も視野に入れつつ、新作の制作にも励みたいと思います。

ー以下、シンガポール国際写真祭HPより抜粋ー

9th SIPF Best Photobook Awards 2024
9th SIPF Best Published Photobook

Dear Franklin by Kurt Tong
Published by Atelier EXB

9th SIPF Best Dummy Photobook

Born From The Same Root by Tsai Ting Bang

9th SIPF Special Mentions for Photobooks 2024
‎[Published Photobook]

Klara and the Bomb by Crystal Bennes
Published by The Eriskay Connection

[Dummy Photobook]

A Flower on the Rock by Yudai Omura

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審査員:Tanvi Mishra [IN], Maarten Schilt [NL], David Campany [UK], Gwen Lee [SG], Yanyou Yuan Di [CN], Erik Kessels [NL] and Ang Song Nian [SG].